なんとか受注できるかと思った矢先、まさかの出来事が
入社1年目の終わり頃に携わった電子部品メーカーさんからの引き合いは、金額的にも規模的にも決して大きくはない「特殊品の油圧ポンプを一からつくる」仕事でしたが、受注も引き合いも限られている「新人」にとってはいろんな意味で大きな仕事だったんです。
用途や仕様についてお客様と打ち合わせをして製品イメージを共有し、設計部に図面を書いてもらえないかと依頼するも、「採算面で難しい」という理由で話はなかなか前に進みませんでした。上司が助け舟を出してくれたおかげで、なんとか図面と見積もりをお出しできたことにホッとしたのも束の間、お客様の予算の都合でその案件が破談になってしまったのです。
一生懸命やるしかなかった
よくある話かもしれませんが、当時の私にはダメージが大きく落ち込んでしまいました。ですが、だからといって「絶対に注文をもらえる」前提で設計部に図面を書いてもらった手前、後には引けません。お客様には煙たがられながらも、毎日のように通い詰めること2〜3ヶ月。念ずれば通ず、とでも言うのでしょうか。ある日、担当者の方から「Kくん、ごめんな。注文になったわ」というご報告をいただいたのです。
最初、低いテンションで話をされていたので、内心ダメかと思っていましたが、実は私の反応の見たさにからかい交じりに話されてたようで、最後には担当者様の方も喜んでくださっていることは、電話越しにも伝わってきました。そこで「今すぐ行きます!」と喜び勇んでお客様のもとに駆けつけ、ご注文をいただいたことは今も忘れません。文系あがりの自分には、機械についての深い知識もない、今の自分にできることをやるしかない。そう思い定めて一生懸命取り組んだことが報われたのだと思います。実際、仲立ちしてくれた商社さんは完全に諦めていましたので、自分の熱意が伝わったことは大変うれしく思います。
開発力や技術力を最大限生かす営業の役割
それから15年以上経験を積んできた今となっては、相応のスキルや結果を求められますし、一生懸命だけでは通用しません。カタログに載っている標準品(既製品)はもちろんですが、当社の強みである特殊製作品への対応力は、お客様のご要望に応え続けることで磨かれてきた開発力、技術力に支えられています。
特殊品のオーダーに関しては、お客様も作る製品のイメージが固まっていないことが多いので、雲をつかむような話にいかに輪郭をつけ、具体的なイメージに近づけていくかが腕の見せどころです。当社の開発力や技術力を最大限生かすために自分がいるんだ、と思って仕事に取り組んでいます。
今でも変わらない想い
ありがたいことに、その電子部品メーカーさんとは15年以上経った今でも、取引が継続しています。そこには「ひとりの人間としてお客様と付き合う」という根幹を今も変わらず持ち続けているからに他なりません。他社製品から乗り換えるかたちで1台目を入れていただいて以来、交換・更新時には毎度、当社製品を選んでくださっているようです。私はすでに担当を外れ、先方も担当者が変わった今でも関係が続いていることを思うと、「初心忘れるべからず」という言葉が浮かんできます。